「内外情勢を斬る」
国連、米国を中心としたこれまでの経済と安全保障の国際的枠組みが崩壊しつつあるが、いまだにそれに代わる新しい枠組みはできていない。90年代までは世界の警察官として紛争に直接介入してきた米国だが、抑止力低下は著しく、もはや警察官として振る舞うのは現実的ではない。米国は日韓豪、NATOなど同盟国と共に紛争に介入する“統合的抑止力”を目指す方向に舵を切ったが、機能するかは不明だ。トランプが政権を握れば同盟国を守るかも怪しい。
国際経済体制も大きく変わった。自由貿易を軸に関税を撤廃し、相互依存関係を強化することが安全保障にプラスになるとして、東アジアでもEUのような協力体制を構築する動きがあったが、トランプ政権は対中貿易で国家安全保障の名目で関税を強化していった。米国がが“専制主義VS民主主義”の壁をつくろうとしていることは愚かとしか言いようがない。
今後、ウクライナ、ガザ、朝鮮半島、台湾海峡でさらに混乱が起こり、世界の分断が進むこと可能性がある。ウクライナの停戦はウクライナにとって公正なものとはなりえず、ガザ紛争を止められるのは米国だけだが、いまの米国にその余裕はない。プーチンが北朝鮮を訪問し、中ロが新たな関係に入った。わが国が対応を誤れば“日米韓VS中ロ北”の対立構造が出来上がってしまう恐れがある。朝鮮戦争になれば北朝鮮が核を使う恐れがあるが、鍵を握るのは中国だ。
台湾有事は2027年までは起こらないだろう。国内消費が落ち込み、過剰生産、不動産バブル崩壊と問題山積の習近平政権の最優先事項は政権の維持と経済成長だ。台湾有事は米中全面戦争ではなく、台湾周辺の局地戦となり、そうなれば日本も必ず巻き込まれる。いまの日本の外交に確固とした戦略がないのが気がかりだ。
田中氏は、このほか米国大統領選について、先ごろ行われた討論会でバイデン大統領の対応に失望するとともに、バイデン大統領に代わる民主党候補者が残る4ヵ月での選挙戦へ尻込みしている現状について言及。「世界にとって残念なことだが、トランプが勝つだろう」との見通しを述べた。また、自民党の裏金問題に言及し、「多くの政治家が既得権益を守ることに走り、自民党は終わりという認識さえない傲慢さゆえに自民党は終わる」と批判した。